ミチーガ(ネモリズマブ)について
<ミチーガ(ネモリズマブ>
新しくアトピー性皮膚炎の生物学的製剤が2022年8月に発売になりました。この製剤は『アトピー性皮膚炎に伴うそう痒(既存治療で効果が不十分な場合に限る)』で保険適応になりました。
適応:アトピー性皮膚炎(既存治療で効果が不十分)
年齢:13歳以上
用法容量:ネモリズマブとして1回60mgを4週間隔で皮下投与
注意点:アトピー性皮膚炎に対するそう痒を治療する薬剤であり、そう痒が改善しても投与中はアトピー性皮膚炎に対して必要な治療を継続すること。(ステロイドなどの外用剤、抗アレルギー剤の内服、保湿剤の併用など)
本剤投与中は原則アトピー性皮膚炎の病変部位に抗炎症外用薬は継続して使用すること
本剤使用中も継続して保湿外用剤を継続使用すること
ミチーガの特徴
ミチーガの有効成分であるネモリズマブは、インターロイキン-31受容体A(以 下、IL-31RA)を標的とするヒト化抗ヒトIL-31RAモノクローナル抗体です。
IL-31はTh2細胞から産生されるサイトカインであり、その受容体であるIL-31RAに結合すると、オンコス タチンM受容体(Oncostatin M Receptor:OSMR)とヘテロダイマーを形成し、下流のヤヌスキナーゼ(JAK)/シグナル伝達性転写因子(STAT)シグナル伝達系を活性化し、細胞内に刺激を伝達します。 IL-31は、知覚神経の細胞体を含む後根神経節やアトピー性皮膚炎患者の皮膚に分布する神経終末に発現し ているIL-31受容体に結合し、そう痒のシグナルを中枢に伝達します。また、後根神経節細胞の神経線維の 伸長を選択的に促進することで皮膚の感覚過敏の一因となっている可能性も示唆されています。更には、 IL-31は各種細胞からサイトカイン、ケモカインの産生を誘導することや角化細胞の分化を妨げ、フィラ グリンの産生を低下させるとの報告があり、アトピー性皮膚炎病態での炎症惹起及び皮膚バリア機能の 破綻にも関与していると考えられます。
ミチーガの成分であるネモリズマブは、IL-31と競合的にIL-31RAに結合することによって、アトピー性皮膚炎の 病態であるそう痒を抑制すると考えられます。
◆つまり
アトピー性皮膚炎に関しては最近どんどん新しい薬が出てきています。外用薬も新しいもの(コレクチム軟膏®️、モイゼルト軟膏®️など)、が出てきていますがさらにアトピー性皮膚炎の症状が出る原因や症状を悪化させる原因などがどんどん解明されてきて、患者様に症状を改善することができる安全な治療を提案できるようになってきています。
この製剤を簡単に説明すると、アトピー性皮膚炎で起こる痒みをとっていくことをメインとする薬剤です。痒みをとると、通常抗アレルギー剤で夜間の痒みなどをとる治療しかなったところ、早い方で1、2日後からかゆみの軽減を実感される報告もあります。つまりいつも説明しますが、人は痒いと皮膚を掻破して傷を作り、そこに炎症細胞が浸潤してきて皮膚の痒みの増悪、紅斑、丘疹などの皮膚症状ができてきます。炎症が起こるとさらに痒みが出てまた掻いてしまうという悪循環になり、そのサークルを断ち切ることができる可能性がある薬剤になるかと思います。
注意点としては痒みがスーッと引いていくと「よくなった」ということで今まで使用していた抗アレルギー剤の内服やステロイドなどの外用剤、保湿剤の外用をやめてしまう人が出てくることです。投薬剤を最初導入する場合、当院ではしっかりこの治療について説明させていただきますが、痒みがなくなってきても必ず定期的に来院し、外用や内服剤の併用をしていく必要があります。
また、この薬剤は13歳から投与ができること、自宅ではなく、病院へ来て月1回の接種で良いことなど、患者様の負担軽減になっているかと思います。
※松阪市では一部の方(高額所得者など)を除き、お子様は高校生まで医療費が本人負担がないことが多いですので、1本とても高額の本薬剤も経済的に負担を感じず治療に参加していただくことができるかと思います。働いている成人の方は会社によっては補助が出る場合がありますのでこちらも勤務している会社や保険会社にお問合せください。)
(本情報は2022年8月時点での情報で、今後変更になることもあります。詳細は各市町村にお問合せください)
◆ミチーガの投与にあたってはまず投与可能か、皮脂の程度の判定など含めて診察が必要です。また投与開始後も添付文書に記載の通り、外用薬や内服薬・保湿剤などを急にやめたりせず基本的には併用していきます。
気になる方は診察にいらしてください。